信楽について思うこと

信楽について思うこと


信楽の街を歩くと本当に狸にばかり出くわす。売っているものは狸しかないんじゃないかと思えてくる。この土地はもともと琵琶湖の底にあり、琵琶湖が現在の位置に移動したあともこの地に良質な粘土層を残していった。古くは茶人たちがこぞって信楽の陶工に茶器を作らせたり、水瓶などの大物の作陶で発展してきたという歴史はあるのだが、狸の登場以来、すっかり狸の焼き物の街になってしまった。

狸の街


信楽の古い陶工さんたちに聞くと信楽狸が横行しだしたのは、それほど古い話ではないそう。ただ昭和天皇がきっかけで起こったこの狸騒動も令和に元号が変わった今からするとだんだん古い話になりつつある。より大きな狸を作っているうちに窯をいくつも使って焼き上げた大狸も登場し、狸の宴は最盛期を迎える。

信楽再発見


そんな狸の街と化してしまった信楽だが、その良質な古琵琶湖の粘土層を有する土地ゆえに実は優れた器の産地でもある。信楽は決して狸だけの産地ではなく、器としての産地において特徴的だと思う。最近は器も注目され始めているが、まだまだ東京の知り合いに信楽の事を聞いてみると「ああ、あの狸の!」という回答がかえってくる始末。器の産地として再発見して広く認知してもらえる日はまだ先のように思う。 …つづく

2019.06.04